松の湯交流館は、平成5年(1993)まで営業をしていた銭湯を再生し、活用した青森県黒石市のコミュニティ施設である。この施設は黒石市中町伝統的建造物群保存地区において、外観の維持が原則となっている特定建造物である。本再生計画においては、昭和7年(1932)の写真を手掛かりに復原を行った。
同地区は木造の歩廊である「こみせ」が景観の特徴であり、市の活性化の核ともなっている地区である。松の湯交流館では、「こみせ」を本来の姿に戻し、「こみせ」を中心とした景観整備の先導事例となることを目指している。また、内部は積極的に活用する方針とし、既存では、銭湯領域と住居領域に分かれていた建物に、内部空間に流動性を与えるような改修を施し、一体的な活用を可能とするリノベーションを行っている。地域住民の情報交換や交流拠点であったという銭湯の意味を継承するため、6年間に渡る市民参加型プロセスにより利活用のあり方が検討された。主に市民の文化活動を行う貸スペースの場として、市の想定以上に活用をされているほか、観光客への案内など観光拠点としての役割も果たしている。