半郊外型都市住宅
この住宅は、成城学園の閑静な住宅地に計画されたものだが、昔郊外住宅地の代表として有名だった住宅地は、現在道路の通行者も多く、プライバシーを保つために都市型住宅としての工夫を求められるようになってきている。この住宅では主要な居住空間を地上面より上げることにより、道路の通行者からの視線をレベル差によりさえぎりながら、内部からは近隣の借景を楽しむことが出来るように配慮した。これは、フランク・ロイド・ライトがロビー邸でも使った半郊外型都市住宅の常套的手法でもある。特に玄関から主要空間のある階へは少しずつ階段を上がるように工夫し、自然に体が移動するような微地形的な空間としてデザインした。実際、あまり上下の移動を感じさせないという点で建主には喜んで頂いている。
構成的には、敷地がT字路の突き当たりに位置していたこともあり、外観にはある程度シンボリックな表現が求められていた。そのため、住宅にとって最もプリミティブな原型である切妻型を主要なモチーフとし、美しいシルエットが感じられるようにデザインしている。内部空間には、プライバシーのあるゆったりした空間が第一に求められたため、水平的にはデッキと一体化し、垂直的には吹き抜けのあるダイニングスペースを主要な家族スペースとして計画した。その上部にはロフトスペースや和室を設け、半地下階には各寝室を設けている。これらの部屋をつなげる上下の移動空間として玄関ホールは機能しているが、ここでは階段が意匠的にも重要な役割を果たしている。